メランコリアとヴィーナスの洞窟 Julia Cumming の途轍もない傑作ソロアルバム「Julia」完全考察・解説レビュー!!
当アカウントが今年に入って狂ったように
これはこれはこれは絶対にヤバいアルバムになる!!!!!
と日本で一番お伝えしてきたJulia Cummingのソロアルバム「Julia」が遂にリリース!!!!
うわぁーーーーーーーーーーーーーーーー予言した通り途轍もない傑作に(号泣)
Julia Cummingの初ソロアルバム『Julia』は、徹頭徹尾メランコリアだけで建てられた夢の城である。
ここには、現在のポップミュージックがしばしば誇示する速度も、勝利も、自己肯定の掛け声もない。
あるのはただ、A&M、バート・バカラック、ローラ・ニーロ、トッド・ラングレン――1
970年代の最良のポップミュージックが、かつて世界に残していった、あまりにも美しい記憶の残響だけである。
だが、それは単なるレトロ趣味ではない。過去の音楽へのオマージュでもない。
これは、もう現実の中では生き延びることができなくなった美しさを、もう一度、夢の内部に避難させるための建築である。
その意味で『Julia』は、ルートヴィヒ2世がリンダーホーフ宮殿に作り上げた「ヴィーナスの洞窟」そのものだ。
金色の貝殻のボートにたった一人で乗り、人工の虹と青い光に照らされた地下の湖を漂いながら、ワーグナーの世界へ沈んでいく王。
そこにあるのは贅沢ではない。狂気でもない。
誰とも分かち合うことのできない美の世界に、一人で沈んでいくための、あまりにも美しく、あまりにも残酷な装置である。
Julia Cummingの『Julia』もまた、そのようなアルバムだと思う。
現実の中で生きるためには、どうしても夢の装置を必要としてしまう人間のための音楽
これは、夢の中でしか生きられない人間のための音楽である。
いや、もっと正確に言えば、現実の中で生きるためには、どうしても夢の装置を必要としてしまう人間のための音楽である。
“I dream, I dream of a fire that stays burning when nobody tends it
I dream, I dream, I dream of a hand that reaches out when nobody lends it”
from “I Dream of a Fire That Stays Burning When Nobody Tends It"
誰も世話をしなくても燃え続ける火。
誰も差し伸べてくれないときに、それでも伸びてくる手。
このフレーズが胸を打つのは、それが希望を歌っているからではない。むしろ逆だ。
そこには、希望など本当は存在しないかもしれないという深い諦念がある。
それでもなお、夢の中でなら、火は消えず、手は伸びてくる。そのあまりにも儚い仮定だけを頼りに、人は生き延びることがある。
そのために、彼女はどうしてもポップミュージックの魔法を必要としたのだ。
バカラック的な和声の甘さ。ローラ・ニーロ的な祈りのような旋律。トッド・ラングレン的な箱庭のサイケデリア。
A&M的な、洗練されすぎたがゆえに逆に哀しくなってしまう音の手触り。
それらはすべて、ここでは引用ではなく、祈りの素材になっている。
このアルバムに鳴っているポップミュージックは、パーティーのためのものではない。
誰かと踊るためのものでもない。拍手を浴びるためのものでもない。
これは、たった一人で金色のボートに乗り、人工の青い光に照らされながら、
もう戻れない夢の奥へ進んでいくための音楽である。
だから『Julia』は美しい。
そして、その美しさは恐ろしい。
なぜなら、このアルバムはポップミュージックが本来持っていた最も危険な力を思い出させるからだ。
ポップとは、明るさのことではない。売れることでもない。時代に適応することでもない。
ポップとは、孤独な人間が、孤独なまま生き延びるために作り出した、人工の楽園なのだ。
Julia Cummingは、そのことを知っている。
だから彼女は、懐かしさを鳴らしているのではない。
夢を鳴らしている。
そしてその夢は、甘いだけではない。
あまりにも甘いがゆえに、ほとんど死の匂いがする。
『Julia』は、メランコリアのためのBGMである。
夢の中で生きることを選んでしまった人間のための、青く光る地下湖である。
そしてその湖の上で、彼女はたった一人、金色の貝殻のボートに乗って歌っている。
誰も火を守ってくれなくても、火が消えない夢を。
誰も手を差し伸べてくれなくても、手が伸びてくる夢を。
それは救いではない。
救いの幻である。
だが、ポップミュージックの魔法とは、いつだってその幻のことだったのだ。
傑作です










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