月から太陽へ LOONAは「So What」でBTSになれるのか?

2022年9月29日XR脚本とKPOPAlternate Reality Game, ARG, loona, So What, ナイアガラ, 大滝詠一

2020.03.12速報!!!こちらの記事に書かせていただいた通りLOONAは見事結成以来初の一位を本日獲得しました!
축하합니다 이달의 소녀!!

このTEXTでは・カムバしたLOONAの現在・過去、そして未来
・Alternate Reality GameとしてのBTSそしてLOONA
について書いています

当ブログのKPOP PLAYLIST楽しんでいただけてますか?
何度も記事に書いていますが脚本はそれが書かれる時代性を担った
最新のPOP MUSICに関与しない限り
なんの意味も持たないものです。

もしキミがアナタが新しい脚本を書こうとしているなら
必然的に現在世界で最も優れたポップミュージックである
KPOPを聴かなくてはならないと思います。
というわけで今回は新曲「SO WHAT」で
よーーーーーーーーーーーーやく1年ぶりの
カムバを果たしたLOONAに関してエントリーしようと思います。

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沙奈絵ちゃん

下手な事書くと世界中のORBITから・・・・
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人間失格

まぁ昔から僕は2chとかでも名指しで批判されたりしてたし
そんなのドーンと来い!なんだニャー!!

LOONAというシステムが生み出したもの

このあたりはもはや伝説的とも
いっていいくらい言及されつくしているので
おさらい的にサラっといこうと思いますが
LOONAはJYPで、そしてLOVELYZの初期三部作を大成功させた
KPOPの名物プロデューサーJaden Jeongことチョン・ビョンギ씨
による前代未聞のアイドルプロジェクト。
グループ名「今月の少女」の名の通り
まずはメンバー一人一人のソロ12曲を毎月リリース
その後でグループ本体としての楽曲をリリースしていく
という宣言の元2016年にスタートしました。
最初にこのプロモーションスタイルを
聞いた時は思わず「おぉぉぉぉぉぉぉーー・・・」と。
「えっ・・・だってこれ普通のアイドルグループ
のリリースパターンを逆にしただけじゃね??」と
思われる方もいるかもしれませんが
確かに通常はグループとしての人気が出る
→メンバーの個人人気が出る→ソロ曲
という流れなわけで奇をてらっているだけにも
見えるこのLOONAの戦略。
でも僕は当時思いました
「こここここれは・・・・ナイアガラトライアングルじゃないか!!」

日本で初めてミュージシャンとして自らが
運営するレーベルを立ち上げたPOP MUSIC界の巨匠
故大滝詠一氏が1970年代から80年代にかけて
はじめたこれまた前代未聞のプロジェクト
ナイアガラトライアングル



一期のメンバーは大滝詠一、山下達郎、伊藤銀次
二期は大滝詠一、佐野元春、杉真理
ソロミュージシャンを架空のグループに集結して
アルバムの中でユニット曲ソロ曲グループ曲
というフォーマットをMIXTURE、つまりは
ポップミュージックというフォーマットを
「遊び倒す」事。

Jaden Jeong씨はキ○ガイがつくほどのJPOPマニア
としても知られています。氏本人は言及していませんが
氏がLOONAでナイアガラと同じように
アイドルポップというフォーマットを遊びつくそう
と考えていたことは間違いありません。
そして次々と"本当に"リリースされた楽曲は
トライアングルどころかDodecagon(12角形)の
ユニット曲をふくめればそれ以上の
ポップス万華鏡ともいうべき21世紀のナイアガラサウンド
といってもいい優れた楽曲群でした

BTSとLOONA 何故海外のARMYとORBITは深読みにハマるのか?

言うまでもなくKPOPの歴史は
BTS以前BTS以後、彼等によって
まさにシンギュラリティー的な進化が起こったわけですが
このBTSのブレイクを解説するのに
「実は潜在需要がある"歌って踊れるボーイズグループ"という忘れられていたポップフォーマットを復活させた」
という解釈がよくされます。

日本では昭和から平成にかけてジャニーズがあったのでこのPOP史上の「喪失感」はありませんでした

でもそれは彼らのブレイクの半分を説明したにすぎないと思っています。
もう一つ重要な側面としてBTSがARG、Alternate Reality Game感覚の
情報発信を意識的に行った事があります

何故か日本ではまったくといっていいほどブームに
なりませんでしたがインターネットの普及とARGは密接な関係があり
NINもARGをテーマとしたアルバムYEAR ZEROをリリースしたりしました

おもしろいことに大滝詠一氏もまた音楽活動において
デビュー時から常にARG的情報発信を行ってファンとのコミュニケーションを図り
POP中毒者といわれる「ナイアガラー」というファンダムを日本で最初に築きあげたのは有名です

BTSの場合はちょっと事情が違っていて
彼らのパフォーマンスにフックされた欧米のファン達が
日本でも「洋楽ファン」がよくやるように
自国ではないアーティストに関する一次情報の不足を補うために
LYRICやMVの中のイメージから「ストーリー」を自ら生み出して
SNSで共有し始めた事
に「気づいた」Bighitが
それをフィードバックさせる事で「WINGS」以降
ARG的な情報発信を意図的に行うようになりました。
ARG的情報発信とは簡単に言うと「答えを発信せずヒントだけを出し続ける」
というスタイルです。
僕等が生きていく上で遭遇するあらゆる事象は
それがそのまま僕等が求める「答え」そのものである事はほぼありません。
僕等はバラバラになった事象をパズルのピースのように
「ヒント」として捉えることで自ら答えを導き出さなくてはならない。
これはかなり欧米的な人生哲学ですがARGが海外で受け入れられたのは
そうした世界と自己との関係性が普遍的なものとして共有されていたからです。
海外のARMYにとってBTSとは新しいARGであり、彼らが発する
ヒントによって自らの人生を(そのBTS世界の中でですが)再構築する
事が第一義とされているのでARMY達はドンドンそのヒントを「答え」とするために
深読みにハマっていくわけです。
Jaden Jeong氏は明らかにこの潮流を読んでLOONAをスタートしました。
そう彼はLOONAVERSEというARGをこのプロジェクトで
仕掛けようとしたのです。
僕が世界で最も敬愛するMVディレクターチームである
DIGIPEDI先生が全てを手掛けたLOONAのMVは
この「ARG的ヒントまみれ」!!でした。
このプロモーション戦略は見事に当たり海外には
ARMY的彼女達の熱狂的ファンダム「ORBIT」が誕生しました。

LOONAというARGは果たして成功したのか?

しかししかししかし!
ここで敢えて言わなくてはならないのは
果たしてこのLOONAというARGは成功したのか?という事です。
いやいや! LOONAは今や楽曲を出せば世界中のItunesで一位になるし
大成功じゃないか


確かに・・・でも僕はこれはORBIT達による「ヲタ活」の結果であり
LOONAVERSEとして世界を構築していくARGとしての強度は
LOONAの場合、次第にシュリンクしてきてしまっていたと思います。
それは何故か? それは彼女達が「おんなのこ」だからです。
繰り返しになりますがARGとはヒントから「ストーリー」を作り出すことです。
でもこのブログでは何度もエントリーしていますが
女の子という存在は本来「ストーリー」を破壊するアナーキストなのです。
魅力的な女の子、XR的に言えばNYMPHETな少女であればあるほど
彼女達はストーリーから脱出してストリームに身を委ねます。
僕はJaden Jeong氏もDIGIPEDI先生も途中でハタ!とその事に気づいてしまった。
本当なら「これからいくぞ!!」と一番ARG的表層が爆発してなくてはならない
グループとしてのデビュー曲「Hi High」がそれまでの自由を謳歌しているような
ソロ&ユニット曲群に比べて曲もMVもどこかそうした制作者側の
「苦渋」を感じる出来になっていた時、僕はおんなのこを「物語」に「閉じ込める」
事の無理筋
を物凄く強く感じました。
2次元や2.5次元表現なら物語・ストーリーに隷属する
そんな「偽物のおんなのこ」を作り出すのは容易い事だと思います。

POP MUSICを聴くとはそういった「安心・安全」なキャラクターを消費する事ではなく
おんなのこ的危うさを共有して自分のモノにする事です

でもPOP MUSICにおいては、もしその女の子達が本当に魅力的なおんなのこで
あればあるほど制作者は自らの「ストーリー」を捨てて
そのおんなのこ達の「ストリーム」を生かさなくてはならない。
これはおんなのこコンテンツを作るときの鉄則・大原則だと僕は思っています。
だからこれはちょっと誤解を招く言い方かもしれませんが
これまでのLOONAの歩みを振り返った時、僕は
「あぁ・・・やっぱり男の子のストーリーは女の子のストリームに勝てない・・」
という事を再認識してしまったのです。

だからLOONAのプロデューサーを降りたJaden Jeong氏の今のプロジェクトは男の子達によるOnlyoneofだしLOONAとFromis9の傑作MV二連発(DKDK、LOVEBOMB)後、大スランプに陥っているDIGIPEDI先生はソヨンという稀代の「ストリーマー」にあわせた(G)I-DLEの「LION」のMVでようやく!復調してきました

月から太陽へ「So What」というストリーム

そしてJaden Jeong氏無き後遂にリリースされた「So What」
ぶっちゃけて前作「Hi HIgh」からの一年間の間に
彼女達の弱点だったパフォーマンスが劇的に良くなった事に加えて
これまでの「ストーリー」から解放された安堵感が合わさって
ストリーム感に満ち溢れた傑作POP ANTHEMになっていると思います。
何しろ今回"あの" SMエンタのイ・スマン会長が参加している事もあり


ちょっとf(x)色強いなぁ・・・・と思ったりもしますが
彼女達がこれまでのLUNATICな月物語から距離を置いて
アポロン的太陽の高みをも手にしようとする高揚感は素晴らしいです

まとめ

アイドル表現の最もおもしろい所は
始めは制作者のストーリーをなぞるお人形だった演者が
次第に自らのストリーム性に気づきそのストーリーを壊してしまう
スリリングさにあると思います。
ニーチェが音という表現形式に関して言ったコトバを引用するなら
それはディオニソス的という事であり2020年代の今においては
XR的と言い換えることが可能です。

そんな「悲劇の誕生」ならぬ「LOONAの誕生」は
このSo Whatから始まったのであり
XR脚本術によってストーリーではなくストリームを
手に入れようとするモノにとって
LOONAの楽曲はますますその重要性を増していくのです。

今回も長い記事をお読みいただきありがとうございました!

 

しかしこのLOONA関係では最もDEEPな考察から2年・・・・・現状の"そうならなかった"LOONAに関する考察はコチラとなります

2022年9月29日Alternate Reality Game, ARG, loona, So What, ナイアガラ, 大滝詠一

Posted by nolongerhuman