遂にタナトスを手放したGreg Dulli 結成40周年にして最高傑作! The Afghan Whigs「Soft Control」徹底解説レビュー

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これまでも先行曲をレビューしてきて今回のThe Afghan Whigsはヤバい!!とお伝えしてきましたが
BIG BINGO!!!! リリースされたニューアルバムがほんとーーーーーーーーーーーーーに素晴らしくて
あのグランジ期の名盤「Gentlemen」さえも遂に遂に遂に超えてしまった

バンド結成今年がちょうど40周年・・・・40年ですよ!!! そこで生まれた最高傑作が「Soft Control」です

遂にGreg Dulliが、40年間ずっと彼の音楽の中心にあった**「タナトス=死への欲望」を手放した

The Afghan Whigs『SOFT CONTROL』が凄い。

いや、凄いなんてもんじゃない。

1986年の結成から40年。

僕はこれ、The Afghan Whigsのキャリア史上最高傑作なんじゃないかと思っている。

なぜか。

遂にGreg Dulliが、40年間ずっと彼の音楽の中心にあった**「タナトス=死への欲望」を手放したからだ。**

他のグランジバンドとThe Afghan Whigsを差別化していたもの

The Afghan Whigsが90年代、いわゆる「グランジ」の時代にスターになりながら、NIRVANAやPEARL JAMやSOUNDGARDENとは決定的に違う場所に立っていた理由として、よく言われるのはもちろん彼らがモータウン、ソウル、R&B、ファンクといった黒人音楽をロックの内部に持ち込んでいたことだ。

これは間違いない。

SUB POPのバンドなのにBlack SabbathではなくMarvin Gayeのグルーヴへ向かう。

歪んだギターの後ろから突然ファルセットが飛び出し、轟音のロックがいつの間にか官能的なソウルミュージックへ変貌する。

それがAfghan Whigsだった。

でも!!!

僕が思うに、もっともっと決定的な違いがあった。

他のグランジバンドが基本的に、

「生きていることが苦しい」

という音楽だったのに対して、

Greg Dulliだけは、

「生きていることは苦しい。……でも、この先にはきっと輝かしい“死”がある」

という音楽を鳴らしていたのだ。

ここが決定的に違った。

タナトスという駆動装置

つまりNIRVANAが「生への絶望」だとするなら、Greg Dulliにはそこからさらに一歩先、

死への誘惑。
死への憧憬。
自己破壊によってしか到達できない何かへの欲望。

があった。

タナトスだ。

だから『Gentlemen』も『Black Love』も、あれだけ苦しく、醜く、嫉妬深く、暴力的で、セックスとドラッグと裏切りに満ちているのに、どこか異様にロマンティックだった。

Greg Dulliの曲では、破滅は単なる失敗ではない。

破滅の向こう側には、いつも何かがある。

夜。

ドラッグ。

セックス。

ホテル。

犯罪。

裏切り。

血。

そして死。

その全部が「ここではないどこか」へ行くためのドアだった。

だから彼の音楽は恐ろしくダークなのに、同時に恐ろしく甘い。

死があるからだ。

死という究極の逃げ道があるからだ。

ところが。

40年経って。

『Soft Control』で。

そのドアが突然なくなった。

いや違う。

Greg Dulli自身が、そのドアを閉めたのだ。

なぜ「SOFT CONTROL」の唄メロは開放的に輝いて鳴っているのか?

2022年には、Greggの長年の親友であり別プロジェクトThe Gutter Twinsの相棒でもあったMark Laneganが亡くなった。

61歳になったDulliは今回のインタビューでもLaneganを含む友人たちの死について語り、さらに新作について「inner peaceのために努力してきた」と明言している。

若い頃の自分については、

怒りがアートや野心を駆動していた。

しかし今は誰とも競争していない。

自分自身とさえ競争していない。

そう語っている。

これ!!!

これなんですよ!!!!!

この変化を頭に入れて『Soft Control』を聴くと、このアルバムが異様なまでに美しく聴こえる理由が突然わかる。

音だけ取り出せば完全に「あのAfghan Whigs」だ。

暗い。

エモーショナル。

ソウルフル。

夜。

欲望。

巨大なコーラス。

Greg Dulliのしゃがれた声。

ピアノ。

ストリングス。

ホーン。

ゴスペル。

全部ある。

むしろGreg Dulli度は過去最高レベルに濃い。

なのに!!!

メロディーが向かっている方向だけが違う。

これまでのGreg Dulliのメロディーは、

「この夜からどうやって消えるか」

を探していた。

しかし『Soft Control』のメロディーは、

「この夜を抱えたまま、どうやって朝まで生きるか」

を探している。

ここが途轍もなく大きい。

だから同じGreg Dulli節なのに、メロディーが以前よりも広い。

明るいという意味ではない。

ポジティブになったという意味でもない。

もっと恐ろしい変化だ。

絶望から逃げる必要がなくなった。

だからメロディーがどこへでも行ける。

The Afghan Whigsは今回、実に22曲をレコーディングして、そこからわずか10曲、37分のアルバムへ絞り込んだという。

これも象徴的だと思う。

若いGreg Dulliだったら全部燃やしてしまったかもしれない。

全部吐き出してしまったかもしれない。

でも今のDulliは、

何を鳴らさないかを選べる。

何を捨てるかを選べる。

何を残すかを選べる。

つまりここでの「CONTROL」とは、感情を抑圧することではない。

ましてや人生を支配することでもない。

握りしめていたものを、

Softに離せること。

それが『SOFT CONTROL』なのではないか。

アルバムのテーマを象徴する「LOOSE TALK」

そしてこのアルバムを象徴しているのが「LOOSE TALK」だ。

僕にはこの曲が、どうしてもMark Laneganへ向けられた歌に聴こえる。

I’ll climb the ladder
And we’ll see-
If forever is the place to be
Melody, what a night-
Should you ever need a place to hide-
Come on-

(from LOOSE TALK)

こうしたゴスペル的フレーズは

昔から彼が最も得意としてきた方法だ。

ただし。

意味が180度違う。

昔のDulliなら、このゴスペルはドラッグのハルシネーションだった。

午前4時。

カーテンを閉め切った部屋。

酒。

コカイン。

煙草。

誰かの身体。

そして、

「このまま朝が来なければいい」

という祈り。

天国を歌っているように聞こえて、その実態は死に近づくことへの恍惚だった。

でも「LOOSE TALK」は違う。

これはもう、

救済そのものを願っている。

死にたい人間が天国を夢見ているのではない。

生き残ってしまった人間が、

死んだ友人に向かって、

「もし永遠という場所が本当にあるなら、そこにいてくれ」

と歌っている。

この違いは巨大だ。

なぜなら、

主体が“死ぬ側”から“残される側”へ反転しているからだ。

ここに『Soft Control』のすべてがあるように思う。

実際、先行曲「Duvateen」についてDulli自身が語っていることも強烈で、墓を掘るイメージや自分の少年時代を振り返りながら、

自分はいま人生の「precipice=崖/境界」にいて、後ろを見れば若かった頃の森が見える。しかし同時に「向こう側への道」も見える、と語っている。

「向こう側」。

昔のGreg Dulliなら、

そこへ飛び込む歌を書いた。

今のGreg Dulliは、

そこへ続く道があることを知りながら、今日を生きる歌を書いている。

死を愛するのをやめた、という単純な話じゃない。

『Soft Control』はいまだに死を見つめている。

むしろ以前より正確に見ている。

だから公式のアルバム紹介にある

「embrace the light and welcome the darkness」

という表現がものすごく重要なのだと思う。

光を選んで、闇を否定したのではない。

光もある。

闇もある。

死もある。

でも、

死を救済にしなくてもよくなった。

これこそがGreg Dulliの40年間で最大の変化なのではないか。

だから『Soft Control』は若返ったアルバムではない。

原点回帰でもない。

円熟という退屈な言葉でもない。

これは、

Greg Dulliという人間が40年間かけて、自分の音楽を動かしていた巨大なエンジンを交換してしまったアルバムだ。

死という一点へ吸い込まれていたメロディーが、初めて四方八方へ広がり始めた。

普通、アーティストが自分を駆動していた最大の欲望を手放したら、音楽は弱くなる。

牙が抜ける。

丸くなる。

ところがGreg Dulliの場合は真逆だった。

タナトスを手放したことで、

The Afghan Whigsの音楽からリミッターが外れた。

今まで死という一点へ吸い込まれていたメロディーが、

初めて四方八方へ広がり始めた。

だから『Soft Control』のメロディーは、

暗いのに開かれている。

悲しいのに祝祭的だ。

死を歌っているのに生命力がある。

喪失を歌っているのに、

異様なほど輝いている。

The Afghan Whigs結成40周年。

Greg Dulli、61歳。

そして10枚目のアルバム。

若者が「死にたい」と歌うロックは山ほどある。

しかし、

死を夢見続けた男が、

親友の死を経験し、

60歳を越え、

「死はもう夢見るものではない」

という地点までたどり着いたロックは滅多にない。

だから僕は『Soft Control』をThe Afghan Whigs史上最高傑作だと思う。

素晴らしいアルバムです!必聴!!!!!

Posted by nolongerhuman