ゴーイングゼロ。傑作!! bunii ニューアルバム「VIRGILIO」完全解説・レビュー!
なんとアルバム収録曲全てにVISUALIZER付きッッッッ!!!!!
上がアルバム全曲プレイリストです
これは凄いアルバムにっっっっっとずーっとお伝えしてきたbuniiのアルバム「VIRGILIO」が予想通り大傑作!!!!!!!
残るのは「透明」と「ゼロ」だけ
『VIRGILIO』が傑作である理由は明快だ。
このアルバムの底には、村上龍『限りなく透明に近いブルー』に通じる、あらゆる色彩、あらゆる感情、あらゆる意味が、ゆっくりとゼロへ向かって脱色されていく感覚がある。悲しい、とも少し違う。怒っている、とも違う。孤独、と呼ぶにはすでに温度がありすぎる。ここで鳴っているのは、もっと冷たく、もっと淡く、もっと名づけようのないものだ。絶望ですら、すでに感情として濃すぎる地点。残るのは「透明」と「ゼロ」だけ。 buniiは、その極限の薄さを、音楽として成立させてしまった。
しかも恐ろしいのは、その「ゼロ」が、痩せたミニマリズムや無機質な実験音響としてではなく、あくまでポップミュージックの内部から鳴っていることだ。
一曲目でクラシック・ポップの“Great Pretender”を掲げた瞬間、この作品は「懐かしさ」や「引用」のゲームに見えるかもしれない。
だが実際には逆だ。あのカバーは入口であって、そこから先に広がっているのは、math rock、emo、Dinosaur Jr.的グランジ、さまざまなポップの記憶と形式をくぐり抜けながら、どのジャンルにも感情を預けきらない音の荒野である。泣き叫ばない。激情に逃げない。ノスタルジーにも寄りかからない。なのに、すべてのジャンルの残骸だけが、確かにここにはある。まるで、20世紀以降のポップミュージックが一度すべて燃え尽き、その灰の上にうっすらと降りた朝の光だけを集めて作られたアルバムのようだ。
普通、emoがあるなら傷がある。グランジがあるなら怒りがある。クラシック・ポップの引用があるならアイロニーか愛情がある。だが『VIRGILIO』は、そのどれもを少しずつ鳴らしながら、どの感情の名前にも最終的には着地しない。シャウトしないことは、この作品において単なる美学ではない。むしろ、シャウトできるほどの輪郭すら、すでに失われているのだ。そこにいるのは「傷ついた私」ではない。「怒れる私」でもない。「寂しい私」ですらない。もっと手前、もっと深部、もっと空白に近い場所で、自己が自己であることをやめかけている、その透過の瞬間だけが歌われている。
bunii=bunny
bunny。ウサギ。寂しさで死んでしまうと言われる生き物。もちろん現実の生態云々を越えて、ここで重要なのはその象徴としての脆さだ。『VIRGILIO』は、まさにその“死んでしまうかもしれないほど繊細なもの”としてのポップミュージックなのである。しかし、このアルバムは「かわいそうな繊細さ」に回収されない。センチメンタルに泣き崩れるのではなく、ただ静かに、薄く、色を失いながら存在している。それは傷ついたウサギの歌ではない。傷つくというドラマのあとに、それでもなお残ってしまった微細な生命反応の歌なのだ。
ハーモニー・コリン『ガンモ』のようなPOP MUSIC
だからボクはこれを、ハーモニー・コリン『ガンモ』の主人公のようなポップミュージックだと思う。
『ガンモ』の人物たちは、社会の中心にも、ドラマの中心にもいない。何かを激しく主張するわけでも、わかりやすく救済されるわけでもない。ただ、世界の終わったあとのような風景のなかで、奇妙に、滑稽に、痛々しく、生きている。『VIRGILIO』もまたそうだ。ここにはロックスターの自己神話もなければ、シンガーソングライター的な告白の熱もない。ただ、世界の彩度がすでに失われたあとの場所で、それでもなお“ポップ”という形式だけがかろうじて呼吸している。この異様さ。この美しさ。このどうしようもなさ。こんなポップミュージック、ありそうでなかった。
つまりbuniiは、
ポップを愛している。
だがポップに救われてはいない。
ロックの残響も知っている。
だが怒りには行かない。
エモの感受性も持っている。
だが涙には沈まない。
そのすべてを通過しながら、最後に残った**「何者でもない感情」そのものを音にしてしまう。**
ここにあるのは、感情の爆発ではなく、感情の蒸発だ。自己表現ではなく、自己の透明化だ。存在証明ではなく、存在がかすかに消えていく速度そのものだ。
世界から色が抜け落ちていくその瞬間へ
『VIRGILIO』を聴いていると、ポップミュージックとは本来、世界を鮮やかに染めるためのものではなく、世界から色が抜け落ちていくその瞬間を、かろうじて記録するための装置でもありえたのだと思い知らされる。
それは慰めではない。
励ましでもない。
共感ですらない。
ただ、透明になっていく。
ただ、ゼロへ向かっていく。
そして、そのゼロの美しさを、これほど正確に、これほど繊細に、これほどポップに鳴らした作品を、ボクは他に知らない。
傑作です











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