BTSはなぜ不安を唄うのか? 最高傑作 MAP OF THE SOUL : 7 徹底解説

XR脚本とKPOPBTS, MAP OF THE SOUL : 7, 防弾少年団

この記事では・何故「MAP OF THE SOUL : 7」はBTS史上最高傑作となったのか
・防弾少年団がMAP OF THE SOUL : 7で手に入れた「未来」
について書いています

このブログではずーっと言及していますが
POP MUSICとはその時代に生きる事の意味を
最新のダンスグルーヴによって「再編集」する行為
の事で
THE BEATLES以降、僕らは
ポップミュージックによって生かされ
ポップミュージツクによって癒され
ポップミュージックによって傷つき
ポップミュージックによって殺される

「社会」とか「世界」という感覚が
「ソーシャル」と呼ばれるようになった2020年代の今
他のどんなアーティストよりもSNS時代における
POP MUSICの役割を認識しているのが防弾少年団で
だから彼らはポップスターになったわけですが
BTSの最新作「MAP OF THE SOUL : 7」は彼らの最高傑作であり
ポップミュージック史における金字塔だと思います。

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沙奈絵ちゃん

女性ARMYの方々のTEXTは凄く沢山ありますけど
男性ARMY視点のものってほとんどないですよね
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人間失格

もうそれはそれこそ1960年代からそうで
実はBEATLESという存在が真摯に批評されはじめたのは
彼らが解散した1970年代以降の事なんだニャー
「POP」である事がイコール生きる事であるっていう感覚は
女の子の方が敏感なんだニャ

選ばれてあることの 恍惚と不安と 二つ我にあり

これは日本文学・私小説が生んだ最大のポップスター
太宰治が「葉」の冒頭に置いたフレーズで

是非上のリンクで全文ご覧ください。もう完全にEMO系HIPHOPのLYRICと同じ事を
太宰はやっていました

以前、この記事で解説させていただいた通り
BTSがBTSたる、正にSNS時代のポップスターであるのは
ファンであるARMYの方々とのソーシャルな関係性にあるわけですが

 

太宰が自らの死さえも心中というカタチで世界・世間(ソーシャル)に
晒さなくてはならなかったように、正に"選ばれてある"ポップスター
にとってソーシャルとの関係性とは作家だけでなく
全てのアーティストにおいて自らの存在を賭けた一大テーマとなってきました。
エミネムはもう20年近くそれだけをテーマにLYRICを書いていますし
テイラースウィフトの「REPUTATION」も
ジャスティンビーバーの「PURPOSE」も
正に優れたポップミュージックはその「恍惚と不安」を対象化する事によって
生まれたものばかりなのです。

何故BTSは不安を唄うのか?そして何故それは正しいのか

こう書いてくるとこーいう風に不思議に思う方もいるかもしれません
「そんな不安なんて例えば地球温暖化とか貧困とかコロナウイルスへの不安に
比べたら微々たるものじゃないの??」
でも違うんです。
もしそのポップスターが南極に住んでいて遂に気温が20度越え
してしまった事を「肌で感じている」のならそれを唄うのは正しいです
例えばエミネムは映画「8マイル」に描かれたように2ndアルバム
までは自分の体験した貧困と毒母の事しか唄いませんでした。

冒頭にも書いたようにPOP MUSICとは自らの生を音楽によって
再編集する事です。
だからその題材はいつも自らの半径5m以内の事でなくてはならない
それが他人からどんなちっぽけなものに見えてもどんな些細な事でも
ポップミュージックに置いては自分自身を曝け出す事だけが正解なのです。
しかしその「曝け出す」行為は時にアーティストを危険な領域に追い込みます。
その端的な例はCOCCO嬢の場合。
彼女は(まだ当時はSNSなんてなかったからではありますが)
ヒット曲を連発していた正にポップスター時代に
送られてきたファンレターに全て応えようとし何人かには直接会いに出かける
という所にまで自分を追い込んでしまい、結果極度の摂食障害を患う事になりました


HIPHOPに憧れていた少年達。
BTSの環境は「WINGS」以降劇的に変わりました。
彼らはもちろん音楽だけに自らのパフォーマンスだけを
「芸」として高めていくっていう日本のアイドル達のような
方向もありえたはずです。しかしそれを防弾少年団はしなかった!
「WINGS」は彼らの分岐点となったエポックメイキングな作品でしたが
ここで彼らはソーシャルというストリームに自らを晒す事を
その恍惚と不安を引き受ける事、つまりはポップスターであることを宣言します。

自分の半径5m、しかもそれはSNSによって日々拡散される5mという
POP MUSICが誕生して以来まだ誰も体験したことがない
ソーシャルという荒波にBTSは飛び込むことを決めたのです。
だからそれ以降BTSの楽曲はANTHEMとしての恍惚度を増していくとともに
正体不明の不安を掻き立てるような闇の色彩をも帯びるようになりました。

3つの時間を貫く「矢」MAP OF THE SOUL : 7 が最高傑作である理由

自分を自分達を曝け出し続ける事、それはほとんど
自らの精神状態のカルテを発表し続けていくのと同じです。
ポップミュージックとしてその作品が強度を増していけばいくほど
その楽曲はアーティスト自身の内面の治療行為に近づいていきます。
防弾少年団の作品もまたリリースされる毎にほとんどセラピーの
途中経過のようになっていく=正しいPOP MUSICと化していきました。
でも僕は前作「MAP OF THE SOUL :PERSONA」を聴いたとき
ちょっとヤバさを感じていました。
この振り切れた「躁」状態感。まるで全ての不安を手放してしまった
かのような恍惚感
はそのカルテを見る・聴くものとして逆に不安を感じました。
どう考えてもBTSを取り巻く熱狂は彼らの不安を
つまりは「一体僕は何者なのか?」という疑問を増大させているはずなのに
ちょっと全体のバランスに危うさを感じたのです。
そしてBTSのリリースとしては最長のインターバルの後の
MAP OF THE SOUL : 7を聴いて僕は心底驚きました・・・・・・・
完璧なセラピー
完璧な自己分析
不安というのは何故発生するのかというと未来に対する観念が不明確だからです。
過去にすがって生きてしまったらその未来はやってこない
現在だけに安穏としてしまったらその未来とは繋がらない
昔の自分を徹底的に分析し
今の自分を徹底的に自問自答した時にはじめて
過去と現在と未来という3つの時間を貫く「矢」を男の子は持つことができる。
このアルバムの中でBTSはポップスターとしての自己を完璧に解体・編集して見せます。
現在という「SHADOW」(不安)は徹底的にその正体を暴かれ

「INNERCHILD」という弱さは優しく手放され
「MOON」という連帯が宣言され
「FRIENDS」という美しい時間はまるで
「風と木の詩」のジルベールとセルジュのように永遠へと流れ込み
N.Oという「刹那の過去」はONという「今」に

そしてWe Are Bulletproofという「過去の焦燥」は
The eternalという未来へとメタモルフォーゼする・・・・・
MAP OF THE SOUL : 7が彼等の最高傑作であり圧倒的なまでの
POP MUSICとしての強度を備えている訳は
遂にBTSがその音とグルーヴとコトバとパフォーマンスによって
「未来」を手に入れてしまったからです。

そしてこんな事はちょっとポップミュージック史的にも奇跡に近い
と思いますが、最終曲の「EGO」でBTSはファンにARMYにというか
言い切ってしまえば世界中の人々に呼び掛けているのです。

この未来は僕等のものだ。さぁ来いよ

と。

まとめ


僕がこのMAP OF THE SOUL : 7という途轍もない傑作を
聴き終わった時、真っ先に思い浮かべたのは映画「BOYHOOD」
(6才のボクが、大人になるまで。)でした。

女の子は物心ついた時から既に女子ですが
男の子は成長という名のもとに男子になる事を学ばされます。
そして多くの場合において「ME」という本当の正しさを忘れてしまいます。
僕がボクである事、それはココロの地図を未来へと繋ぐ
唯一の方法論です。

MAP OF THE SOUL : 7でBTSはそれを証明しました。
今度は僕らXR世代の男子ARMYがその「時間の矢」に手を伸ばす時なのだと思います。

今回も記事を読んでいただきありがとうございました。